2021.03.17更新

 

虎ノ門桜法律事務所の代表弁護士伊澤大輔です。

 

賃借人が長期間家賃を滞納しているけど、いずれ連帯保証人から支払ってもらえればいいなどと考え、賃借人に対し契約解除をし、明渡請求することを漫然と放置している大家さんはいらっしゃらないでしょうか。

そんなことをしていると、連帯保証人から、保証契約を解除され、滞納家賃の回収ができなくなってしまうおそれがありますので、注意が必要です。

 

今回は、連帯保証人による保証契約の一方的な解除を認めた横浜地方裁判所相模原支部平成31年01月30日判決をご紹介させていただきます。

 

契約解除

 

 

■ 事案の概要


 

 

市営住宅を賃借するにあたり、被告(賃借人の母)が連帯保証しました。しかし,賃借人は当時から生活保護を受給しており,ほどなく賃料支払を怠るようになって,賃借人と接触・連絡もとれない状態で契約解除ができる3か月分の滞納が生じたものの,原告(賃貸人)は,賃貸借契約を解除せず,連帯保証人である被告に上記滞納額の分割納付を求めました。その後も賃借人は賃料をまったく支払わず,滞納分が累積し,被告は,原告に対し,保証責任の拡大を防止するため,再三,賃借人を退去させて欲しいと伝えたが,原告は応じず,賃貸借契約から約14年が経過した時点で,ようやく建物明渡訴訟を提起し,被告に対し,滞納賃料,違約金,賃料相当損害金の合計約332万円の支払を求めました。

 


■ 判決の要旨


 

 

賃借人が賃料の支払を怠り,将来も支払う見込みがないことが明らかで,賃借人ともまったく接触・連絡もとれず,被告が保証責任の拡大を防止するため再三訴外賃借人を退去させて欲しいとの意向を示していたにもかかわらず,原告は,賃貸借契約の解除及び明渡しの措置を行わず,そのまま使用を継続させ滞納賃料等を累積させていたことから,原告には連帯保証契約上の信義則違反が認められ,保証人からの一方的意思表示による解除が許容されるとし,契約締結から12年以上が経過して被告が賃借人の退去を求めた時点で,黙示的な解除の意思表示がなされたと認定し,以後の保証債務の履行を免れると判断しました。


 また,仮に上記時点での解除の有無にかかわらず,上記時点以降の保証債務の支払を請求することは,権利の濫用として許されないと判断しました。

 


■ 判断理由


 

 

判決は、「期間の定めのない継続的な建物賃貸借契約を締結する賃貸人、保証人は、保証契約を締結する時点で、債務の拡大の可能性・危険性・保証人側からの債務拡大の回避・防止が困難であるという事情について保証契約の前提ないし内容として、当然認識されているものと考えられ、また、継続的契約については、当事者間の信頼関係を基礎としていることをも考慮すると、賃貸人も保証契約上不当に保証人の債務が拡大しないようにする信義則上の義務を負担していると認めるべきである。」と判示しました。

 

そして、

①上記保証契約締結後相当な期間が経過し、

②賃借人が賃料の賃料の支払を怠り、将来においても賃借人が債務を履行する見込みがないか、

③保証契約締結後に賃借人の資産状態が悪化し、これ以上保証契約を継続させると、保証人の賃借人に対する求償権の行使も見込めない状態になっているか、

④賃貸人が上記事実を保証人に告知せず、保証人が上記事実を認識し、何らの対策も講じる機会も持てないまま、未払賃料等が累積していったり、

⑤上記のような事情のため、保証人が保証債務の拡大を防止したい意向を有しているにもかかわらず、賃貸人が依然として賃借人に上記建物の使用収益をさせ、賃貸借契約の解除及び建物明渡しの措置を行わずに漫然と未払債務を累積させているような場合には、

 

賃貸人の前記保証契約上の信義則違反により、賃貸人が保証契約の解除により信義則上看過できない損害を被るなどの特段の事情がない限り、保証人は、賃貸人に対する一方的意思表示により、上記保証契約を解除し、以後の保証債務の履行を免れることができると解すべきである。

 

また、少なくとも、前記のような事情がある場合、仮に保証人からの解除の意思表示がなかったとしても、賃貸人の保証人に対する保証債務の履行請求は、信義則に反し、権利の濫用として一定の合理的限度を超えては許されないと解すべきであると判示したのです。

 

投稿者: 弁護士伊澤大輔


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