2021.03.12更新

 

虎ノ門桜法律事務所の代表弁護士伊澤大輔です。

 

今回は、マンション管理組合の役員である理事および幹事について、「立候補者が役員候補者として選出されるためには、理事会承認を必要とする」旨の管理規約の条項(以下、「本件条項」といいます。)の有効性について判断した裁判例(東京高裁平成31年4月17日判決)をご紹介させていただきます。

 

マンション管理

 


■ 事案の概要


 

 

原告らがマンション管理組合の役員として立候補したものの、理事会が理事ら全員の賛成により、本件条項に基づき、これを承認しない旨の決定したことから、原告らが役員立候補権を侵害されたとして、理事ら全員を被告として、共同不法行為に基づく損害賠償請求をした事案です。

 


■ 本件条項の有効性


 

 

高裁は、本件条項について、明示されてはいないものの、成年被後見人等やこれに準ずる者のように客観的にみて明らかに管理組合の理事としての適格性に欠ける者については、理事会が立候補を承認しないことができるという趣旨であると解され、その限度で本件条項は有効であると判示しました。

 

そして、理事会が上記の裁量の範囲を逸脱して、立候補を認めない旨の決定をした場合は、立候補者の有する人格的利益を侵害するものとして、違法性を有すると判示したのです。

 

上記は、区分所有法には、規約は、区分所有者間の利害の衡平が図られるように定めなければならないと定められており(30条3項)、これを害するような規約の定めは無効であることを理由とした判断です。

 


■ 理事らの過失は否定


 


 
もっとも、高裁判決は、次の理由から、役員立候補者の承認をしない旨の決定をした理事らの過失を否定し、原告らの損害賠償請求を認めませんでした。

 

・本件条項には、立候補者を承認するか否かの基準が明示されていないこと。
・理事会の裁量を制限するような定めはないこと。
・承認をしない旨の決定をした時点では、本件条項の趣旨が裁判等によって明らかにされていなかったこと。
・理事らが法律やマンション管理について専門知識を有するものではなかったこと。
・理事としての報酬も多額ではないこと。

 

ただし、規定に承認するか否かの基準が示さされていたり、理事が法律に関し専門的知識を有していたり、この判決が出た以上、今後は、違法な決定をした場合には、過失が認められ、損害賠償責任を負うおそれがありますので、注意が必要です。

 

なお、違法な決定に関与しても、過失がないと判断した要素、判断過程は、今後の実務の参考になります。

 

投稿者: 弁護士伊澤大輔


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