2015.12.11更新

建物の賃借人が家賃を滞納しているからといって、賃貸人(あるいは賃料の保証会社や管理会社)が、一方的に、解錠をして賃借人の居室内に立ち入り、賃借人の家財を撤去処分したり、鍵穴に鍵ロックを取り付けたり、鍵自体を交換して、賃借人が立ち入られないようにしてしまうことがありますが、これらはすべて違法な行為であり、許されません。このような行為をしてしまうと、賃貸人らは、賃借人に対し、損害賠償責任を負うことになります(大阪地裁平成25年10月17日判決、東京地裁平成24年9月7日判決、大阪高裁平成23年6月10日判決等)。

 

賃借人に対し、「必ず放り出します。」、「荷物捨てるぞ」、「どこの組のもんや」、「家賃を払わないことは、無銭飲食だ。」、「犯罪者」といった暴言を吐くこと(大阪地裁平成25年10月17日判決)や、「荷物は全て出しました」との張り紙をドアに貼る行為(姫路簡裁平成21年12月22日判決)も、違法行為とされています。近所に聞こえるよう大声で督促することや、早朝・深夜の督促行為も違法行為と評価される可能性が高いでしょう。

 

このような追い出し行為を理由とする損害賠償請求に対し、賃貸人らから、自力救済行為として違法性を欠く旨の反論がなされることがありますが、自力救済行為は、原則として法の禁止するところであり、ただ、法律に定める手続によったのでは、権利に対する違法な侵害に対して現状を維持することが不可能又は著しく困難であると認められる緊急やむを得ない特別の事情が存する場合において、その必要の限度を越えない範囲内でのみ例外的に許されるにすぎないのであり(最高裁昭和40年12月7日判決)、以上のような追い出し行為が自力救済行為として違法性を欠くと判断されることはまずあり得ません。

 

たとえ、賃貸借契約自体が有効に解除されていたとしても、結論はかわりません。

また、賃貸借契約書に「賃貸人は、賃借人が賃料の支払を滞らせたときには、鍵を交換できる。」、「賃借人が賃料を滞納した場合、賃貸人は、賃借人の承諾を得ずに建物に立ち入り、適当な処置をとることができる」などとの特約(いわゆる自力救済条項)が定められていたとしても、このような条項は、公序良俗に反し無効であり、自力救済行為は許されません(札幌地裁平成11年12月24日判決、東京地裁平成18年5月30日判決)。

 

このような違法な追い出し行為をした場合の損害賠償額ですが、家財を処分してしまった場合には、その家財の時価評価額が財産的損害として認められます。

 

また、財産的損害とは別に、賃借人が居室を一方的に追い出され、不便な生活を強いられた期間や態様に応じて、数十万円程度の慰謝料が認められています。

なお、家賃の保証会社が、5ヶ月間の間に、賃借人宅を7回訪問し、賃借人の携帯に65回架電し、連絡を求める旨の書面をドアに挟むなどしたのに、賃借人が電話に出ず、折り返しの電話連絡もせず、連絡を求める旨の書面も黙殺したという事案について、まれにみる悪質な賃借人であると非難されてもやむを得ない不誠実な対応であったといわなければならず、こうしたことは、慰謝料額の算定上考慮に入れるべき重要な事情というべきであるとして、慰謝料額を20万円にとどめた裁判例が存在します(東京地裁平成24年9月7日判決)。

 

霞ヶ関パートナーズ法律事務所
弁護士  伊 澤 大 輔
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投稿者: 弁護士伊澤大輔