2015.05.27更新

建物の賃借権は、その登記がなくても、建物の引渡を受けていれば、新所有者にも対抗できます(借地借家法第31条)。その結果、建物の所有権の移転に伴い、当然に、賃貸借契約も新所有者に承継され、新所有者を新たな賃貸人として継続します。

 

賃貸人たる地位の移転・承継について、原則として、賃借人の同意は不要と解されています。賃貸人の地位の移転には、賃貸人の賃借人に対する義務の移転を伴いますが、その義務の履行は、誰が賃貸人であっても、その履行に大きな差異を生じるものではないため不利益は大きくなく、通常、賃借人にとって、新所有者に賃貸借契約が承継される方が有利だからです。

 

新所有者に承継される賃貸借契約の内容は、賃料額や賃貸期間から特約に至るまで、すべて従前の契約と同じです。同一内容の賃貸借契約が当然に承継されますので、改めて新所有者との間で賃貸借契約書を巻き直す必要はありません。もっとも、実務的には、新所有者から、賃貸借契約書の巻き直しを求められることがあり、念のため従前の内容のものを巻き直すというのであれば問題ありませんが、契約内容の変更を伴うことがありますので、これに応じるかは慎重に判断すべきでしょう。契約書の巻き直しに応じる義務はなく、これを拒否したからといって、賃貸借契約の継続に支障をきたすことはありません。

 

敷金も(所有権移転登記時点で未払賃料等の債務があればこれに充当され、その残額が)、新所有者に承継され、実際に旧所有者から新所有者に対し敷金の引継ぎがなされたか否かにかかわらず、差し入れた敷金は、退去後に、新所有者から返還を受けることになります。

 

他方、賃借人が賃料を滞納し、既に未払い賃料が発生している場合、その賃料請求権は、建物の所有権の移転に伴い当然には承継されず、新所有者がこれを取得するには、別途、債権譲渡の合意とその手続きをとる必要があります。

 

霞ヶ関パートナーズ法律事務所
弁護士  伊 澤 大 輔
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投稿者: 弁護士伊澤大輔