2018.07.17更新

虎ノ門桜法律事務所の代表弁護士伊澤大輔です。

 

今月12日の朝日新聞朝刊に、こんな見出しの記事が掲載されました。

 

タイのタムルアン洞窟に、少年ら13人が閉じ込められた事件、唯一の大人であるコーチは教え子を危険に巻き込んでしまいましたが、タイでは、コーチを責める世論は強くないといいます。

 

洞窟

※イメージ写真です。

 


 

 

当初は、なぜ「雨期に洞窟に」との疑問の声も上がりましたが・・・はい、正直に白状します。私も、当初、この事件の一報に接した時、そういう感想を抱いた者の一人です。

 

しかし、7月2日に洞窟の奥5kmで発見され、コーチのエーカポンさんがお菓子を分けたり、大声を出さないように指示して、少年らの体力を温存させていたことがわかると、これに呼応するかのように、エーカポンさんのフェイスブックには、「これからも最高の指導者でいて」などと3万件以上のコメントが寄せられました。

 

エーカポンさんは幼くして両親を亡くし、孤児として寺で10年ほど暮らしました。成人後、夜市で小物を売ってしのぎながら、サッカーコーチの職を得た苦労人のようです。

 

とかく責任追及ばかりが議論されがちな世の中ですが、自戒の意味も込めて、ご紹介させていただきました。

 


 

 

ところで、少年らの命を繋いだ食料は、サッカー練習場近くの6畳ほどの小さいな駄菓子屋で購入されたものでした。

 

洞窟に行く前、少年2人がやってきて30袋以上のスナック菓子とペットボトルを買っていったといいます。

 

その駄菓子の70歳になる女店主カムさんは、少年らが洞窟に閉じ込められたニュースを耳にしてから、1日2回、無事に帰ってくるようにお祈りを捧げてきました。

 

このようなたくさんの心優しい人たちの想いや、努力によって、少年らは無事救出されたのですね。

 

・・・そういえば、私も小学生の頃、よく駄菓子屋に入り浸って、餅太郎や、スナッキー、蒲焼さん太郎などを買っていたことを思い出しました。何だかとても懐かしい気持ちになりました。

 

投稿者: 弁護士伊澤大輔

2018.07.13更新

 

虎ノ門桜法律事務所の代表弁護士伊澤大輔です。

 

平成30年5月25日、著作権法の一部を改正する法律案が交付されました。 これは、主に、デジタル・ネットワーク技術の進展により、新たに生まれる様々な著作物の利用ニーズに的確に対応するため、著作権者の許諾なしに、著作物を利用できる範囲を拡大し、著作物の利用をより円滑に行えるようにすることを目的としたものです。

著作権法 

 

 

■0 はじめに


  

原則として、他人の著作物を利用(例えば、コピーしたり、インターネットで送信したりする行為)するには、著作権者の許諾が必要です。

ただし、例外的に、法律で定める一定の場合には、著作権者の権利が制限され、許諾を得なくても、自由に利用することができます。今回の法改正により、以下の通り、その範囲が拡大されたのです。

 

 

■1 技術の開発又は実用化のための試験の用に供するための利用


 

公表された著作物は、著作物の録音、録画その他の利用に係る技術の開発又は実用化のための試験の用に供する場合には、その必要と認められる限度において、利用することができるようになります(新著作権法第30条の4)。

試験の用に供する場合に限らず、その他の当該著作物に表現された思想又は感情を自ら享受し又は他人に享受させることを目的としない場合も同様です。

 

 

■2 情報検索のための利用


 

著作物の市場に悪影響を及ぼさないビッグデータを活用したサービスのため、著作物の利用について、著作権者の許諾なく行えるようになります(同法第47条の6)。

例えば、書籍等の著作物の所在を検索するサービスについて、その結果とともに、書籍の表紙やその内容の一部を表示することが可能となります。

イノべーションの創出を促進するため、情報通信技術の進展に伴い将来新たな著作物の利用方法が生まれた場合にも柔軟に対応できるよう、ある程度抽象的に定めた規定となっています。

 

 

■3 情報解析のための利用


 

コンピューターによる情報解析(多数の著作物その他の大量の情報から、当該情報を構成する言語、音、影像その他の要素に係る情報を抽出し、比較、分類その他の統計的な解析を行うこと)を行うことを目的とする場合には、必要と認められる限度において、記録媒体への記録又は翻案を行うことかができます(同法第47条の7)。

例えば、大量の論文データを収集し、学生の論文と照合して盗用がないかチェックし、盗用箇所の原典の一部分を表示するなど、論文盗用の有無を検証するために利用することができるようになります。

 

 

■4 教育の情報化における利用


 

ICTの活用により教育の質の向上を図るため、学校等の授業や予習・復習用に、教師が他人の著作物を用いて作成した教材を、ネットワークを通じて生徒の端末に送信する行為等について、著作権者の許諾なく行えるようになります(同法第35条)。

現行法では、ここの著作権者の許諾とライセンス料の支払いが必要でしたが、これが不要となります。

ただし、著作権者に対し、補償金の支払いは必要となります。

 

 

■5 障害者の情報アクセス機会の充実


 

現行法では、視覚障害者や発達障害等で著作物を視覚的に認識できない者のみが対象になっている規定を見直し、肢体不自由等を含め、障害によって書籍を読むことが困難な者のためにも、録音図書の作成等を許諾なく行えるようにすります(同法第37条)。

これは、マラケシュ条約(視覚障害者や判読に障害のある者の著作物の利用機会を促進するための条約)の締結に向けられたものです。

 

 

■6 美術品の展示作品の解説等における利用


 

美術の著作物又は写真の著作物を原作品により公に展示する者は、当該著作物の解説又は紹介をすることを目的とする場合には、その必要と認められる限度において、当該著作物を複製し、上映し、又は 自動公衆送信を行うこと等ができるようになります (同法第47条関係)。

現行法では、小冊子(紙媒体)への掲載のみ、許諾不要でしたが、例えば、タブレット(デジタル媒体)での解説や紹介が可能になります。

 

 

■7 施行日


 

平成31年1月1日からの施行です。

ただし、「4 教育の情報化における利用」については、公布の日から3年を超えない範囲内において政令で定める日とされています。

 

 

 

 

投稿者: 弁護士伊澤大輔

2018.07.04更新

 

虎ノ門桜法律事務所の代表弁護士伊澤大輔です。

 

最近、芥川賞の候補作に、主要な参考文献が明記されていなかった問題で、出版元の講談社がお詫びをした上で、甚大なダメージを受けた著者の尊厳を守り、作品の評価を広く読者と社会に問うためとして、ホームページ上で、候補作の全文を無料公開することを発表しました。

 

ところで、なぜ、参考文献を明示しなければいけないのでしょうか。

 

 

■法的根拠


 

それは、著作権法上、「公表された著作物」は、一定の要件の下、著作権者の許諾を得なくても、「引用して利用することができる。」のですが(第32条1項)、その場合、引用した「著作物の出所を、その複製又は利用の態様に応じ合理的と認められる方法及び程度により、明示しなければならない。」と定められているからです(第48条1項)。

 

 

■参考文献の明示方法


  

書籍などの出版物の場合、引用した参考文献の出版社や、書籍・雑誌名、掲載版又は号、発行年(学術論文の場合は掲載ページも含む。)を明示しなければなりません。

 

明示の場所は、利用した著作物に近接していることが原則ですが、著作物の性質や文章の流れ等を考慮して近接した箇所に明示することが不適切な場合には、注記を付して巻末や脚注に表示する方法も許容されます。

 

 

■そもそも引用とは?


  

引用は、「公正な慣行に合致し」、「引用の目的上正当な範囲内で」行うことができます(第32条1項)。

 

裁判例上、これら要件の充足性を評価するメルクマールとして、引用の方法として、例えば、引用文をカギカッコでくくって表示するなど、自己の文章との区別が図られているか(明瞭区分性)、自己の著作が主であり、引用される他人の著作物が従たる存在であるか(主従関係)が示されています。

 

さて、冒頭の問題、参考文献とされた文献の販売元である新潮社は「参考文献として記載して解決する問題ではない」とコメントし、これに対し、講談社は、「著作権法に関わる盗用や剽窃などには一切あたりません」と反論しているようですが、今後、どうなっていくのでしょうか。

 

 

 

 

投稿者: 弁護士伊澤大輔