2017.07.27更新

虎ノ門桜法律事務所弁護士の西明優貴です。

 

私は、家族全員(父、母、兄)が美容師の美容師一家育ちですので、日本の美容師・美容院の皆様に有益な情報を発信していきたいと思っていますので(もちろん、普段の私の業務に関連するような、これら以外の情報も発信します!)、宜しくお願いします。

 

さて、今回は、【共同経営者として、美容院を開店した美容師が、「労働者」であるとして、その未払賃金の支払いが認められた事例】(東京地裁平成28年10月6日労働判例1154号37頁)をご紹介させていただきます。

 


 

 

Qどのような場合に、「労働者」と認められるか。

 

美容院業界では、いわゆる「面貸し」(サロンの一部のスペースを借りて働く等)というように、業務委託契約に基づいて働く美容師(フリーランス)もいれば、雇用契約に基づいて、従業員(労働者)として働く美容師もいるなど、働き方は多様です。

そして、美容師が、「労働者」といえるのだとすれば、未払賃金(給料)の支払請求はもちろん、残業代支払請求をすることが出来ますし、その他の保護も受けられますので、「労働者」の判断基準をおさえておきましょう。

 

どのような場合に、「労働者」と認められるかにつき、一般的な見解は、

①仕事の諾否の自由

②業務遂行上の指揮監督

③時間的・場所的拘束性

④代替性

⑤報酬の算定・支払方法

を主要な判断要素とし、 その他、

⑥機械・器具の負担

⑦専属性

を従たる判断要素として、 総合考慮しています。

 

ですから、仕事の依頼を断れず、業務の進め方等について指示を受け、勤務時間・勤務場所が規律されており、本人に代わって他の者がその仕事を提供することが認められていない、給料が労働の対価として支払われている等の事情が認められる場合には、「労働者」といえるでしょう。

 


 

 

Q今回のケースの問題の所在

 

さて、今回紹介するケースは、共同経営者として、美容院を開店した美容師(以下、「Aさん」といいます。)が、「労働者」といえるかが争いになりました。

一般的な感覚としては、経営者であれば、労働者でないのでは?と考えられそうですね。

ただ、本裁判例(東京地裁平成28年10月6日労働判例1154号37頁)は、Aさんの稼働実態等に踏み込み、上記の要素を考慮し、Aさんは、「労働者」であると判断して、未払賃金(給料)の支払を認めました。

 

判旨から読み取れるポイントは以下の通りです。

①Aさんは、勤務時間や勤務場所について自由に決定できる状況もなく、また、週5~6日、自身への指名の有無に関わらず出勤し、稼働していたこと

②支払われる給与の会計上の名目は、「賃金」であり、また月給制であり、さらに雇用保険に加入していたこと

③Aさんは、共同経営をすることになった美容師(以下、「Bさん」といいます。)との間で、共同経営について大まかな認識を共有していたものの、詳細かつ具体的な経営態様に関する合意をしておらず、また、Bさんは、美容院の代表取締役に就任し、登記もなされたが、Aさんは、代表取締役また取締役のいずれにもならなかったこと(当然登記もしていない)

④Bさんだけが、金融機関や税理士・公認会計士との対外的打ち合わせを執り行っていたこと

 


 

 

結び

 

以上から、美容師の皆様が、労働者なのか、フリーランスなのか、経営者なのかについては、個別的な検討が必要であることが分かりますね。

 

上記の通り、仮に、労働者であれば、上記未払賃金請求のほかに、残業代請求も認められる可能性がありますし、また、誤解を恐れずに言えば美容院業界は、法律のメスを入れて更に発展すべき業界であると思っていますので、お悩みになった場合には、お気軽にご相談していただければ幸いです。

 

 

 

 

投稿者: 弁護士伊澤大輔

2017.07.26更新

虎ノ門桜法律事務所の代表弁護士伊澤大輔です。

 

当事務所のポリシーの一つとして、「交渉は、相手方と直接会って行う」ということがあります。

多少遠くて、移動に時間が掛かったとしても、基本的に、私たち弁護士が、相手方の自宅等の最寄の喫茶店に出向いて、交渉をします。

 

それは、相手方と直接会って、全人格で交渉をし、率直に考えを伝え、相手方の考えを理解した方が、話がまとまりやすいからです。経験的にそう感じています。私は、十数年間、損保会社等の依頼により、相手方の属性に問題があったり、言動が威迫的であったり、要求が過大であったりする、厳しい交渉案件を受任してきましたが、ほぼ全て相手方との直接面談により解決をしてきました。

 

事務連絡程度のことであれば、電話で足りるかもしれませんが、電話では一方的な話になりやすく、顔が見えないところで、実のある話ができるのでしょうか?

 

また、弁護士の中には、何でも書面のやりとりにとどめ、相手方と話したがらない、会いたがらない方がいらっしゃらない方が、そのようなやり方で果たして適切な解決に至るのか疑問です。

 

当事務所では、緊急性の高い事案では、ご依頼のあったその場で、直ちに、相手方に電話をし、アポをとって、速やかに会うことにしています。

 

ただ最近、弁護士介入すると、何度電話しても、電話に出ず、折り返しの電話もなく、連絡がとれなくなってしまう方がいらっしゃいます。

無視されるのは寂しいので、何かしらの意思表示はしていただきたいです。

投稿者: 弁護士伊澤大輔

2017.07.19更新

虎ノ門桜法律事務所の代表弁護士伊澤大輔です。

 

今回は、賃借人が、賃貸人から、賃料増額請求を受けた場合のQ&Aについて、ご説明させていただきます。

 


 

 

Q 賃料の増額請求を受けましたが、賃貸人の請求額に納得がいかない場合、賃料の支払いはどうすればよいですか?

 

借地借家法第32条2項に、「建物の借賃の増額について当事者間に協議が整わないときは、その請求を受けた者は、増額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の建物の借賃を支払うことで足りる。」と定められています。したがって、裁判が確定するまでの間、自らが相当と認める家賃を支払えば、足ります。従来通りの賃料が相当と考えれば、とりあえず、従来通りの賃料を支払っておけばよいでしょう。

 


 

 

Q 増額請求された賃料額通りに支払わないと、賃貸借契約を解除されるおそれはないですか?

 

前述の通り、自ら相当と認める家賃を支払っていれば、基本的に、賃貸借契約を解除されることはありません。但し、支払っている賃料額が、賃貸人が負担すべき賃貸物件の公租公課の額をも下回るほど低額で、そのことを賃借人が知っていたときは、債務の本旨に従った履行をしたとはいえず、解除されるおそれがあります。

 


 

 

Q 賃貸人が増額した額でないと賃料を受け取ってくれない場合には、どうすればよいですか?

 

賃貸人の受領拒絶を理由に、供託すべきです(民法第494条)。賃貸人が受け取らないからといって、供託もせず、そのまま放置していると、賃料不払い(債務不履行)を理由に解除されるおそれがあります。

 


 

 

Q  増額請求に応じない場合、その後の手続きはどのようになりますか?

 

賃貸人と賃借人との任意の話し合いで合意に至らない場合、積極的に請求をする側の方で法的手続きをとらなければ、事態は動きませんので、賃貸人から賃料増額の調停申立(調停前置主義)がなされることを待つことになります。調停が不成立の場合には、調停条項の裁定や、調停に代わる決定という制度もありますが、賃貸人の方でさらに訴訟提起することになります。

 


 

Q 賃料増額の裁判が確定したとき、既に支払った賃料に不足額がある場合には、どうなりますか?

 

借地借家法第32条2項但書に、「その裁判が確定した場合において、既に支払った額に不足があるときは、その不足額に年1割の割合による支払期後の利息を付してこれを支払わなければならない。」と定められていますので、不足額に年1割の利息を付して支払わなければなりません。

 

ここでいう裁判には、判決のほか、賃料額が調停や裁判上の和解により確定し、調書に記載された場合も含まれます。

もっとも、調停や裁判上の和解の場合には、その条項の中で、不足額の精算方法について定められるのが、一般的でしょう。

 

 

 

投稿者: 弁護士伊澤大輔