2018.07.19更新

 

虎ノ門桜法律事務所の代表弁護士伊澤大輔です。

 

お中元などの配送料金について、百貨店同士が合意をし、一律値上げをしたとして、公正取引委員会が、大手5社に対し、独占禁止法違反(不当な取引制限)で、総額約1億9000万円の課徴金納付命令を出す方針を伝えた旨の報道がなされました。

 

お中元

 

■価格カルテル


 

これは、事業者が他の事業者と共同して、価格の引き上げ等について合意をし、一定の取引分野(市場)における実質的に競争を制限する「価格カルテル」と呼ばれるもので独禁法において、不正な取引制限として、禁止されています(2条6項)。 

 

価格カルテルは、数量制限カルテル、入札談合とともに、ハードコア・カルテルと呼ばれ、競争法を有するどの国でも原則として違法とされています。

 

 

■「共同して」とは


 

価格カルテルは、他の事業者と「共同して」行われる必要がありますので、他の事業者との「意思の連絡」(合意)が必要です。

 

「意思の連絡」は、

・一方の対価引上げを他方が単に認識、認容するだけでは足りませんが、

・事業者間相互で拘束し合うことを明示して合意することまでは必要でなく、

・相互に他の事業者の対価の引き上げ行為を認識して、暗黙のうちに認容することで足りる

と解されています(東芝ケミカル審決取消請求事件(差戻審))。

 

この「意思の連絡」は、全員で顔を揃える会合で行われる必要はありません。また、違反事業者の従業員間で直接に行われる必要はなく、他人を介して間接的に行われるものでも足ります。

 

 

■「競争を実質的に制限する」とは?


 

 

「価格カルテル」が成立する要件の1つ「競争を実質的に制限する」とは、競争自体が減少して、特定の事業者または事業者集団が、その意思で、ある程度自由に、価格等を左右することによって、市場を支配することができる形態が現れているか、または少なくとも現れようとする程度に至っている状態です。

 

市場を支配する程度については、一定の取引分野における競争を完全に排除し、価格等を完全に支配することまでは必要ありません。

 

一般的に、過半あるいはそれに準じる大きな市場シェアを有する事業者が競争を制限する内容の合意をすれば、「競争を実質的に制限する」と認定されます。

他方、合意をした事業者のシェアがそれほど高くない場合であっても、違反行為に参加している事業者以外の競合他社の多くがその価格設定に追随していれば、その合意が行われたことによって、「競争を実質的に制限する」と認定されることになります。

 

また、競争が実質的に制限されたというためには、合意の内容が実施に移されたことは要件ではありません。

 

続いて、「価格カルテル」の違反措置について説明させていただきます。

 

 

■課徴金納付命令


 

本件では、百貨店大手5社に対し、総額約1億9000万円の「課徴金納付命令」が出される見込みですが、これは独禁法等で定められた一定の算式(課徴金額=違反行為が行われた期間中の対象商品または役務の売上高または購入額×課徴金算定率)に従って計算された金額を国庫に納めるよう命じる行政処分です。

 

課徴金算定率は、違反行為の内容、事業者の業種(製造業等か、卸売業か、小売業か)、事業者の規模(大企業か、中小企業か)によって異なります。

 

課徴金算定率は、違反行為を繰り返した場合や、違反行為で主導的な役割を果たした場合には加算され、反対に、早期に違反行為をやめた場合には軽減されることが規定されています。

 

 

■課徴金減免制度


 

本件では、大丸松坂屋(東京)も合意に加わっていましたが、事前に違反を自主申告したため、課徴金納付命令を免れる見通しです。

 

これは、「課徴金減免制度」(リーニエンシー)によるものです。不当な取引制限に自ら関与した事業者が、その違反の内容を公取委に自主的に報告した場合には、課徴金が減免されます(7条の2)。

 

公取委の調査開始日より前に、最初にこの報告をした事業者については、課徴金が100%減免されます(課徴金納付命令が出されません)。2番目に報告した事業者の減額率は50%で、5番目までの事業者が減額の対象になりますが、3番目以下の事業者の減額率はいずれも30%です。

 

この制度は、違反行為の発見、解明を容易にし、競争を早期に回復することを目的としたものです。

 

 

■排除措置命令


 

本件において、公取委は、「排除措置命令」も出す模様とのことです。これは、違反行為を速やかに排除するよう命じる行政処分で、例えば、価格引き上げの決定の破棄、破棄したことの取引先等への周知、再発防止のための対策等が命じられます。 

 

 

 

投稿者: 弁護士伊澤大輔