2018.06.13更新

 

虎ノ門桜法律事務所の代表弁護士伊澤大輔です。

 

今年5月25日に、120年ぶりの改正となる商法(運送法・海商法)が公布されました。来年(公布から1年以内)の施行が予定されており、運送業務に関わる企業に、契約書や実務運用の点で、大きな影響を及ぼすと考えられます。

 

そこで、今回は、物品運送に関する法改正のポイントについてご紹介させていただきます。

 


 

1 危険物に関する荷送人の通知義務(新設)

 

荷送人(運送を依頼する者。荷主や、総合物流業者、フォワーダー、宅配業者などの運送取扱人)は、運送品が引火性、爆発性その他の危険性を有するものであるときは、その引渡しの前に、運送人に対し、次の情報を通知しなければなりません(改正商法第572条)。

 

 その旨、

 当該運送品の品名、

 性質、

   その他の当該運送品の安全な運送に必要な情報

 

現行法に規定はありませんでしたが、改正法で新設されました。

荷送人がこの通知義務を怠り、事故が起こった時、荷送人が損害賠償責任を負うおそれがあります。

※この規定は任意規定のため、契約で商法と異なる定めにすることができます。

 


2 高価品の損害についての運送人の責任

 

現行法では、荷送人が運送人に対し、運送を委託するにあたり、高価品であることを明告しなければ、運送人は損害賠償責任を負いませんでした(商法第578条)。

 

 

これに対し、改正法では、次の場合には、上記規律が適用されず、運送人が損害賠償義務を負わされる場合があります(改正商法第577条2項)。

 

 物品運送契約の締結の当時、運送品が高価品であることを運送人が知っていたとき

 運送人の故意又は重大な過失によって高価品の滅失、損傷又は延着が生じたとき。

 

※この規定も任意規定のため、契約で商法と異なる定めにすることができます。

 


3 複合運送人の責任

 

陸上運送、海上運送又は航空運送のうち二以上の運送を一の契約で引き受けた場合における運送品の滅失等についての運送人の損害賠償の責任は、それぞれの運送においてその運送品の滅失等の原因が生じた場合に当該運送ごとに適用されることとなる日本国の法令又は日本国が締結し た条約の規定に従うことになります(改正商法第578条1項)

 


4 全部滅失の場合の荷受人の損害賠償請求権

 

現行法では、荷受人(運送された物品を引き受けた者)は、一部でも荷物が届かなければ請求できませんでした。

 

これに対し、改正法では、荷受人は、運送品の全部が滅失したときも、物品運送契約によって生じた荷送人の権利と同一の権利を取得するとして、損害賠償請求することができるようになります(改正商法第581条1項)。

 

なお、荷受人が運送品の引渡し又はその損害賠償の請求をしたときは、荷送人は、その権利を行使することができなくなります(同条2項)。

 

※この規定も任意規定のため、契約で商法と異なる定めにすることができます。

 


5 運送人の責任の消滅等

 

運送品の損傷又は一部滅失についての運送人の責任は、荷受人が異議をとどめないで運送品を受け取ったときは、消滅します。

ただし、運送品に直ちに発見することかができない損傷又は一部滅失があった場合において、荷受人が引渡しの日から2週間以内に運送人に対してその旨の通知を発したときは、この限りではありません(改正商法第584条1項)。

 

また、運送品の滅失等についての運送人の責任は、運送品の引渡しがされた日(運送品の全部滅失の場合には、その引渡しがされるべき日)から1年以内に裁判上の請求がされないときは、消滅します(改正商法第585条1項)。現行法の5年の商事消滅時効より大幅に短縮されましたので、ご注意ください。

なお、この期間は、運送品の滅失等による損害が発生した後に限り、合意により、延長することができます(同条2項)。

 

この規定は、運送品の滅失等についての、運送人の荷送人又は荷受人に対する不法行為による損害賠償の責任についても準用されます。

 


6 運送人の債権の消滅時効

 

運送人の荷送人又は荷受人に対する債権は、これを行使することができる時から1年間行使しないときは、時効によって消滅します(改正商法第586条)

 


7 運送人の被用者の損害賠償責任

 

運送品の滅失等についての運送人の損害賠償の責任が免除され、又は軽減される場合は、その限度において、その運送品の滅失等についての運送人の被用者の荷送人又は荷受人に対する不法行為による損害賠償の責任も、減免されます(改正商法第588条1項)。

 

ただし、この規定は、運送人の被用者の故意又は重大な過失によって運送品の滅失等が生じたときは、適用されません(同条2項)。

 

 

 

 

 

投稿者: 弁護士伊澤大輔